めがね舎ストライクのスタッフが今話したい人と対談する「ど真ん中を、目がけて。」
第二回目はストライクの内装も手がけて下さった、別注家具の設計制作 SITATE の萬代英志 (ばんだい ひでし)さんとストライクの職人 横山です。
「選ぶ、よりも、仕立てる」というコンセプトのもと特別注文家具から住宅・店舗などの空間づくりまで、多岐にわたる設計・製造を手がける萬代さん。
場所は萬代さんの工房。職人横山が家族で使うテーブルを萬代さんの指導の元製作しました。
テーブルを製作する中で、職人についての話をお伺いしてきました。
工房には大小さまざまな木材が置かれています。
まずは木についての基礎知識を教わりました。
萬代
「多分これからは職人を何年やってきたとか価値なくなってくると思うねん。熟練された職人技でできる人は一握りやね。それを普通の職人としてやっていくというのは多分なかなか難しい。
そういう意味で言うとストライクのやろうとしていることは、これからの時代にあってると思う。何かを究めることに意識を持ちすぎない方が良いかもしれない。」
横山
「作業していて感動したというか、これからの職人に通ずるなと思ったのは、テーブルの天板の木目の組み合わせ方です。
ここは業界的にもデザイナーさんが基本関与してこないとお伺いしました。ということは職人が木目の組み合わせを考えるということですよね。
耐久性や実用性を踏まえながらも、萬代さんの芸術的なセンスが込められている様を実感しました。
そこもストライクが今後目指すべきことで、僕の中で職人のそんなところがもっとフューチャーされるべきだと思っています。技術はもちろん探求していくべきなんですけど、別軸でもっと大事なものがあるような気がします。」
萬代
「そこは、絶対重要なところやね。」

横山
「お客様のことを大事にされてる気がするんです僕は。萬代さんをみてると。」
萬代
「大事にしているのは。単純に喜んで貰わんとな。それが一番重要なことやと思う。物を作るということと、お客さんが喜んでもらうことの両方ができるかってこと。」
横山
「比嘉さん※ストライクオーナー から聞いて気になっていたのが、”完成間近になったときに、ちょっと違うってなったら一から作り直したりするねん。”って言ってたことです。」
萬代
「笑 それは何ていうのかな。違和感があんねんね。やっていて違和感を感じた時は、やり直すことはある。」

横山
「その違和感というのは、図面通りにできているけど違和感があるということですか?」
萬代
「そうやね。実際にものとして出来上がったときに、ほんのわずかなサイズの違いで効果がだいぶ違ってくる時はやり直す。ちょっと高いとかこっちが狭いとかで、居心地が悪くなる。っていうことがわりとあるかなあ。それはやっていかんとわからないことがある。
例えばこれ(※横山が作成中のテーブル)を見て、このカーブとこのカーブどっちにする?ってなったとき。
最初はこのカーブが良いと思って作っていたけど、置く場所を考えたらこっちのカーブの方が合うってなった時に、作ってたけどやり直すみたいな。
最終それでやって、お客さまが喜んでもらえる効果が大きかったら良いかな。」

横山
「違和感というのが、すごい気になるというか。良いワードですよね。」
萬代
「できるだけスッと入るものを作りたい。ドヤっていうものより、誰がみてもスッと入るというのが違和感がないということ。」

横山
「萬代さんが言っていた、時間が経つと節がうるさくなってくる場合があるという話にも繋がっててきますね。」
萬代
「長く使うもんやからね。人によっては一生使うし。そうなってくるとあんまり個性的じゃない方が良いというか。人の気持ちも変化するから。その人の3.4年先とかを目指してやっている。」
横山
「めがねも同じように考えられたら良いですよね。」
萬代
「3.4年経つとその人がいいと思っているより、絶対その人って良くなる。その人がもっと良くなったときに似合うものを作れたらより良いね。めがねでいうと最初はなんか背伸びしてた感じなんやろうけど、でもそれが似合ってくるよっていうぐらいのものを提案してあげる。」
横山
「それはめちゃくちゃ大事かも。ヒアリングで未来をより具体的に聞くっていうのはもっと意識しても良いと思います。そのめがねをかけて今後どうなりたいのか。」
萬代
「それが一番重要。そのめがねををかけることによって自分が作られていく。かけたらその設定になる。僕はお客様から今の状況の話を聞くんやけど、僕はその話は話半分くらいで聞いてる笑 その人がどんな生活したいのかなとかどういう店をしたいのかなっていう未来を想像する。」
横山
「それこそお店の内装って、完成してからがスタートですもんね。そこから10年20年と続いてく。ちなみにBASEMANとかBARの内装とかも比嘉さんと未来の話はしたんですか?」
萬代
「そやね。比嘉さんは未来のヴィジョンを持ってはる人やからすごいやりやすい。こっちも気づきがあるというか。一緒に喋りながらどんどん形が見えてくる。なんかデザインするというよりは探す作業というか、どこに行きたいんかっていうのを一緒に探す。宝探しみたいな感じでやっていく。それが面白い。」
横山
「これからの職人像っていうのは、使う人に共感して寄り添う力が必要ですよね。」

萬代
「聞く力、想像力。自分って見えないことが多いけど、他の人から見たら、この人こういうところが凄いなとか、格好良いなとかがわかる。そこを客観的に教えてあげる。それができたら一番満足してもらえるんじゃないかな。」
横山
「なるほど。」
萬代
「まあどうしても今はやっぱりヴィジュアルがメインになっている。見た目はもちろん大事やけど、木で言ったら匂いとかもあるし、その五感を使うってことも重要やね。」
横山
「感覚に訴えかけるというか。」
萬代
「そやね。全部の感覚を使う。」

横山
「違和感があると止まるっていうのがわかる気がします。お客様に感覚で満足させる。図面からものになったときに触覚とか嗅覚とか、実際にここは変えた方がいいとか。五感を使ったときにちょっと違うかもとか。」
萬代
「そやね。おっしゃる通り。それは作っているものの強みというか。そこで変更は効くし、こっちの方が良いと思ったら変えるし。」
横山
「それはストライクにも通ずることですよね。」
萬代
「ここはこれの予定やったんやけど、こうしたんですよっていうのをちゃんと伝えてあげたらなるほどってなる。どんどんそれを繰り返していくことで精度が高まっていく。」

ー対談を終えてー
横山
「萬代さんも、若い時は節目をあえて使っていたり、パッとみてわかりやすい格好良いものを作っていたみたい。でも結局長いこと使っていったときにうるさくなってくるそう。
うるさくなってきた時に、結局行きついたのが自然に馴染むということ。違和感がないとか、スッと落ちるっていうのに繋がってくるんやろうな。と話を聞いてて思った。質感が自分の中で変わってきたんやろうなと思う。」
丹羽野
「家具って洋服とかめがねに比べて、使う年数が全く違うじゃないですか。下手したら一生使う。お店の内装も一度決めると、なかなか変更しない。価格も全然違いますし。今の気分と、10年後の店舗のあり方ってなったときにそこの違和感って重要なのかもしれないですね。」
横山
「話していて凄く思った。萬代さんの作品はそこにおっても違和感がないけど存在感がちゃんと出てる。ストライクのめがねもそうなっていくべき。ドヤっていうものにオーダーだと走りがちになってしまうけど。」
丹羽野
「今そのときやからいいけれど、じゃあ来年どうだろうとか、生活環境とか仕事が変わったときにも馴染むかどうか。」
横山
「そこまで考えながら、提案できるかどうか。今後のストライクにはより重要なことやと思う。」

SITATE
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職人 横山
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編集・写真 : 丹羽野